先月号では、わが国に於ける「天麩羅」の起源と、その名の由来について話したが、今月号からはその実技・調理法について話してみよう。
カラリと揚がった天麩羅は油から引き上げたとき、衣の表面からサッと油がひいていくような感じがする。このように揚げるには、いくつかのポイントがある。列記してみると、①材料の吟味と下ごしらえ、②衣の溶き方と管理、③油の温度と管理、④油から引き上げるタイミング、等々である。
①の材料の仕込みでとくに注意を要するのは海老で、色艶のはっきりした新鮮感のある素材を求め、頭・皮を外し、背わたを取り除き、尾の先を斜めに切り落とす。これを忘れると、揚げている最中に尾の中の空気と水が膨張し、破裂して色々な事故(火傷や最悪の場合は火事など)の要因となる。その後に腹側に4~5ヶ所包丁を入れ側筋を切り、海老が極端にカーブするのを防ぐ。包丁を入れた後に、肉を逆方向に反らせるようにのすとよりよい。
本来、天麩羅に一番美味なのは車海老の中型以下、一尾15~20gぐらいの巻海老といわれている。車海老は、別名鞘巻ともいうが、これは刀の鞘と、車海老の体の縞模様が似ているところからきている。中型のものは中巻と呼ばれ天麩羅に最適だが、それより小型の才巻・小巻も重宝されている。現在日本国内で消費されている車海老の90%以上が日本各地の海で養殖されたものである。
当地でも日本の業者がクィーンズランドで養殖を試みているが、市場には未だほとんど出てこない。一般に手に入るのは、有頭・無頭のBanana prawn(大正海老)、有頭・無頭のBlack tiger prawn(熊海老)、無頭・無殻のBlack tiger prawn(prawn cutlet)等々の輸入品や、当地産もある紅い色のTiger prawn(熊海老)等々である。
紛らわしいことにこの熊海老もクルマエビ科の海老で、姿・形もよく似ているし、味も中々に美味であるが、肉質がほんの少し硬いことと、加熱後の紅色が少しきつい点が違いといえる。また日本ではかき揚げ用として、芝海老や桜海老も使用される。それぞれに味や色・性質が異なるので目的と嗜好により使い分けるといい。
魚介類は、あまり味の強くない新鮮なものが喜ばれる。白ギス(Silver whiting)、沖ギス(King George whiting)、青ギス(Grass whiting)、さより(Garfish)、鯒(Flat head)、鯛(Snapper)、ホウボウ(Butterfly gurnard)、ドーリー類(King・John・Sun・Mirro r-dory)などは、とくにお勧め。
味や栄養面で白身魚より個性の強い鰯・鰺・鰆・鯖などの青背の魚も揚げたての熱々だとなかなかの美味である。烏賊や貝類も、新鮮なら大変いい素材だが、烏賊には隠し包丁が必要だし、高級品であるアオリ烏賊(Squid)は加熱による身の縮みが激しいことと、硬くなりやすいことから、やや不向きである。
貝類にも同様なことがいえる。日本ではあまり使われない素材だが、マッスル(Mussel)やピピ(Pipi)のかき揚げも十二分にいけるものであったことを加筆しておく。
野菜でも、日本とは違う素材の味も楽しめる。ズッキーニ、スカッシュ、ブロッコリーをはじめ、中華野菜の芹や搾菜(ザーサイ)、香菜(コリアンダー)などもおもしろい。
技術と道具が揃っていれば、ほとんどの果物、アイスクリーム、氷、溶いた納豆やとろろ芋、生の卵黄までもが素材となりうる。
