今月号も引き続き、天麩羅の実技と調理法、とくに粉の扱いについて書いてみようと思う。その前に先月号で大事なことを書き忘れていたので、まずはそのことから。
前回で材料の下処理について記したが、魚介類でも野菜類でも下ごしらえの最後に水切りをしっかりすることを忘れないで欲しい。材料に水分が附着していると、その水分が衣をはがしてしまったり、衣が焼けたような色合いになったり、仕上がりが水っぽかったりする。これらを避けるために、布巾やペーパータオルなどで十分に水切りをしてから油に入れるように。
こんな話がある。「冷凍だけど新鮮そうな帆立を食材に天麩羅を揚げようと、新しい粉で作った衣をつけ新しい油で揚げたのに、黒く焦げたように揚がってしまう。せっかくの貝柱が台無しになるので、火を弱くしたらベチャベチャに揚がってしまい、油っぽいしおいしそうな揚げ色がつかなかった」といわれたことがある。
この原因は、材料の貝柱の水切りが不十分だったことが考えられる。ペーパータオルなどで水気を十分ふきとっていれば、きっとおいしく揚がったと思われる。 では、前号の続きに話を戻そう。「衣の溶き方と管理について」。
天麩羅に用いる粉は、でんぷん質の少ない薄力粉を用いる。使用前に粉をふるい粒子を細かくし、空気を適度に混入させる。ふるいにかけた粉は、使用するまで冷やしておく。最近では、小麦粉の中に5~10%程のコーンフラワーや片栗粉を混ぜて、よりカラリと揚げる効果を強めている人もいる。市販の天麩羅粉(合わせ粉)にもこれらのスターチ類が入っているようである。
用意した粉を溶くときには、冷水1リットルに対し、卵(全卵、また卵黄どちらでも可)1個を混ぜた水を用意。必要量の水に、同量もしくは2~3割多めの、冷やした粉を入れ、太めの菜箸で軽く叩くように合わせる。溶くというよりは、水と粉を合わせるように混ぜる。所々に粉が残っている状態でOK。
一度にあまりたくさんの量を作らず、少しずつ作り足し、絶対に混ぜすぎず、極力熱から遠ざける。これらは、粉が粘りを持ちにくくするための工夫で、粉のグルテン化の防止と呼ばれている。
グルテン質は衣の中で網を張ったような状態になり、粘りが出てくる。この衣で揚げると、グルテン質の網が熱の伝導を妨げるので、表面だけが焦げてしまったようになり、中まで火が通らない、ぼてっとしたできの悪い天麩羅になってしまう。
溶いた粉の中に氷を入れる人もいるが、一般の人には扱いが難しい。溶き用の水をあらかじめ冷蔵庫で冷やしておくのがベターだが、時間がない場合は水の中に氷を入れて水を冷たくすることを勧める。
この場合、粉に氷が入らないように注意をするように。氷を粉に入れると、氷が溶けたところに粉と混じり合っていない層ができる。また、氷が溶けることにより水の量が増え、水っぽい衣になる。水で粉を溶くときには、水に粉を入れて溶く方が、粉を水に入れるよりダマになりにくく、粘りも出にくい。
また“精進は厚めに”という言葉があるように、野菜類には少し厚めの衣を作る。それらには下粉(生粉ともいう)をつけない方が揚げやすいようだ。
