天ぷらの話 その5 - 食べ物・料理・味の旅 - Dengon Net

天ぷらの話 その5

2007-05-31

先月号では大分脇道にそれて道草を食い、油を売ってしまったので、今回はなんとか本論に戻していこう。

先月号で油脂には動物性と植物性があると述べた。そしてそれらは、さらにその性状別に油と脂に分けられている。油とは常温で液体状を保つもので、脂とは常温で固体状を保つ油脂のことである。

天ぷらにむいている揚げ油は、この分類でいう植物油ということになる。

主なものとしては胡麻油、大豆油、コーン油、米油、菜種油、ひまわり油(Sunflower Oil)、綿実油、カヤ油などであろう。もちろんオリーブ油もよき揚げ油ではあるが、価格的に少し無理があるかもしれない。これらの油は搾取されたあとに精製され、市場に出荷される。これを自絞油という。

一般に市販されている天ぷら油はいくつかの油が混合されたものである。当地でのBlended Vegetable Oilというのも同様のものである。また揚げ油としてだけではなく、生食にも適するようにより高い純度に精製したものをサラダ油と呼んでいる。   オリーブ油はサラダ油の代表的なものであったが、現在では精製技術が発達したため、綿実油、大豆油、菜種油、コーン油なども原料として用いられている。

話がまたまた脇道に入るが、日本でもオリーブが作られ、オリーブの郷として観光スポットの一つにもなっている場所がある。それは香川県の小豆島である。おもしろいことにこの島は何と精製胡麻油の出荷量全国一でもあるのだ。

古い私事の話で恐縮だが、今から数十年前、日本で料理人修行をしていた頃、所属していた調理師会を通して、この胡麻油会社から招待されて見学に行ったことがある。風向きが良かったのかフェリーが島に近づくにつれ、煎った胡麻の芳香が我々を迎えてくれたことを覚えている。

菜種油は先月号では灯火用の油とされていたと紹介したが、その後、品種の改良や精製法の進歩によって、その毒性を含まない可食油となってきた。

本来菜種(Rapeseed )とは、アブラナ科の和種ナタネをさす。文部省唱歌“朧月夜”に出てくる菜の花とはその俗称である。明治以降、欧州より洋種ナタネが導入され、採油用はこれに変わり、和種ナタネの一部は春が旬の野菜として利用されている。

やはり古い話だが、数十年前自分の家の反対側は、春になると一番下に麦の緑、中間に菜の花の黄色、そしてその上には桃の花が赤く色付き、なんともいえぬ素晴らしい田園風景を呈していた。

さて、このアブラナ科のアブラナ属には、和種・洋種ナタネを始めとしてキャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、白菜、かぶ、からし菜などが含まれ、その属を始めとして、アブラナ科には、大根、わさび、クレソンも包括されている。

当地では、ひまわり油や大豆油、コーン油、混合植物油と同じようにCanola Oilというのをよく見かけるが、この油も上記の菜種油の一種である。

どの油もそれぞれの個性と味を持っている。天ぷらを揚げるときのアドバイスとしては、それらの油に2~3割程度の胡麻油(中国産のものでもよい)を加えることを勧める。それにより風味が香ばしくなり、よりカラッと揚がりやすくなるし、時間をおいてからもベチャッとしてしまう度合いがうんと少なくなる。

日本の天ぷら専門店では、それぞれ油のオリジナルブレンド(調合法)を持っていて、私が修行していた“銀座の天一”では、納入業者にブレンドを注文し、各店舗をはじめ、デパートの地下食品売り場のストールなどでも、天一ブランドとして販売している。