前号までの天ぷらの話で、重要なポイントと記した油、とくに、そのなかの胡麻油の原料である「胡麻について」が今回の話。
胡麻はゴマ科の1年草で、2~3cmの縦溝のある長円形の果実のなかに多く入っている種子のこと。原産地はインド、またはアフリカといわれているが、東及び東南アジアや南北アメリカでも栽培されている。日本では、関東・中部地方で多く栽培されているが、需要を賄いきれず、前記の各国から輸入している。
脂質、タンパク質とも豊富で、各種必須アミノ酸を含み、極めて良い植物性タンパク質だ。ほかにもカルシウム、鉄、ビタミンB1・B2が多く含まれている。
種子の色により、白胡麻、黒胡麻、茶胡麻(金胡麻ともいう)に分けられる。白胡麻は品質も含油率(約55%)も高いが、収穫は少ない。黒胡麻は収穫量は多いが、品質・含油率(約50%)共にやや下がる。そして茶胡麻は、香りが良く他種の中間の含油率だが、生産量が少ない。料理の目的や彩りなどに合せて、適宜に使い分けている。
胡麻油は、この種子を炒って(焙煎)胡麻特有の香りを引き出したあと、圧搾採油する。高級脂肪酸のオレイン酸、リノール酸、ビタミンEが含まれている。ほかにも、抗酸化物質のセザモールが含有されているので、ほかの油脂に比べて酸化が起きにくい。
おもに天ぷら油や調味油など食用油として用いられるが、そのほかにも頭髪用や機械の冷却用、薬用としても使われる。
精製された洗い胡麻のままでは、外皮が硬いので消化吸収が悪く、素材特有の臭みや苦味もある。それゆえに胡麻油に限らず食用加工するときは、炒って「炒り胡麻」にする。炒り胡麻をすり鉢(当り鉢)ですり潰した「当たり胡麻」に砂糖・醤油・塩やほかの調味料を加えて、茹でた野菜類と和えたのが胡麻和え、または胡麻よごしという。あっさりしたものから、かなりアクの強いものまで、幅広くどんな素材にも適応する和え衣となる。合わせる調味料により、胡麻酢和え、胡麻酢味噌和え、胡麻味噌和え、胡麻マヨネーズ和え、胡麻辛子和え、胡麻山葵和え、白和えなどの料理になる。
和え衣とは違う目的で調味料と合わせたものに、鯛茶漬けの鯛の下味用、九州の地方料理の胡麻鯖を作るときの胡麻醤油、汁物仕立てにした胡麻汁、胡麻汁蕎麦などもある。また、「胡麻垂」という濃い目の合せソースは、シャブシャブをはじめとする鍋物の漬けダレ、各種焼物の香りダレとして使用される。
当り胡麻に葛粉と水を使い、加熱しながらよく練ったものを型に入れて成型する胡麻豆腐は、禅僧が中国から伝えた普茶料理(精進料理)の献立のひとつで蔴腐(まふ)と呼ばれている。ちなみに、「蔴」は中国語で胡麻のこと、「腐」は豆腐そのものをいう。
煮物を盛り付けたうえにすり胡麻や切り(刻み)胡麻、ひねり胡麻、炒り胡麻をかけて化粧胡麻としたり、煮物や炒め物にまぶして香り付けとしても使用する。安土桃山時代の茶人千利休は、胡麻を料理によく用いたため、休の字を同音の久に替えて胡麻を用いた料理を利久揚げ、利久煮、利久寄せとも呼ぶ。
胡麻は、海外に住む我々が日本の味をアピールするのによく用いるが、最近はほかの国の料理人たちにも醤油と並んで用いられている食材である。
