鰻の話 そのⅠ - 食べ物・料理・味の旅 - Dengon Net

鰻の話 そのⅠ

2007-10-31

今月号からは、関東・関西で味・仕様の違うものの第3弾として「鰻」について話してみよう。

日本で食用としている鰻は主に、ジャポニカ種であり、和名は「ニホンウナギ」や 「ヤマトウナギ」という。近似種のヨーロッパウナギはアンギラ種、アメリカウナギはロストラータ種と呼んでいる。

日本の暖流に面した本州・四国・九州・南西諸島及び太平洋・インド洋の熱帯・亜熱帯域・オセアニア地域に広く分布しているミナミオオウナギは、マルモラータ種で、また別物である。当地オーストラリア産の鰻も、このミナミオオウナギの仲間でオーストラリス種、英語ではLong-finned eelと呼ばれ、食用魚のひとつである。しかし、原住民族には本来このウナギを食する習慣はなかった。その後数十年にわたるヨーロッパの移民により、この魚も市場に上がるようになった。

二十数年前に、私もこの魚に挑んだ。魚体が日本の鰻の3倍程(軽く1m以上)もあったため、最初にしたのは、その長さのまな板を探すことだった。バケツに数匹の鰻と氷を共に入れた。氷で動きの鈍くなった鰻をまな板に乗せ、後頭部に包丁を入れ〆る。そして割に入って驚いた。それは皮の硬さだった。普通鰻割には割き包丁を使う。この包丁、使う地域によってその形が違う。江戸(関東)風・京風・上方(大阪)風・中京(名古屋)風などがある。私の持っていた江戸割き包丁や名古屋包丁、そのどちらを使っても、にっちもさっちもいってくれない。そこで思い出したのは、その昔さばいたことがあるウツボの調理法。ウツボをさばくには、割き包丁ではなく出刃包丁を使った。そこで、この鰻の頭に打った目串の所を別の人に押さえてもらい、出刃包丁で再度挑戦、やっとこさ割開いた。本当にウンとナンギさせられた(オヤジギャグでゴメンなさい)。

そして次は、焼きだ。しかしどのように焼いてもみても、蒸してみても、この皮の硬さには文字どおり歯が立たなかった。最終的には皮を引きはがし、穴子の下煮のように割り下地で炊き上げた。数時間この下地に漬け込んで下味を含ませた上身を串焼きにして、その割り下地を煮詰めて作ったツメダレを塗り添えて、お客様に試食していただいたが、肝心の脂肪分も予想していたようにはのってなく、味に至ってはあたかも別の魚を食しているようであった。そして評価は、やはり今ひとつであった。その後は戦意も消失して再チャレンジしていない。

例のごとく話が脱線してしまったが、元に戻そう。日本ではかなり古くから鰻を食しており、各地の貝塚からも骨の化石が出土しているし、日本最古の歌集「万葉集」にも鰻を詠った歌が記載されている。

〈痩せ人をあざける歌 二首〉 「石麻呂に 吾 物申す 夏痩せに良しという物ぞ むなぎ取り召せ」

「痩す痩すと 生けらば 在らむをはたやはた むなぎを捕ると  川に流るな」

この「むなぎ」とは「武奈伎」と書き、鰻のことを「むなぎ」と呼んでいた。その後「ウナギ」という語が登場し、それが定着した。日本における昨今の鰻は、その生産・流通の約99%が養殖鰻。その姿は、背の色が黒く腹が白い、細くぬるぬるとした魚というイメージが強いが、天然の鰻の腹側(胸部も含めて)は黄色なので、胸が黄色い「むなぎ」が語源となった。そのほかの説もある。家屋の棟木のようだとか、料理の際の胸開きからといったものだ。何はともあれ万葉の頃からその栄養価は知られていたようだ。