塩の話 その1 - 食べ物・料理・味の旅 - Dengon Net

塩の話 その1

2005-03-01

料理業界には、古くから「塩を制せば調理に長ず」という言い伝えがある程、塩は大事な調味料である。今回は、この塩について少し語ってみよう。

塩の存在と製法

そもそも塩は人や動物にとって必要不可欠、しかも他に代用するものがないから、洋の東西を問わず古くから重宝されてきた。ローマ帝国の頃には、兵士や役人に給料として塩を与えたこともあった。給料を意味する英語のサラリー(Salary)の語源は、塩の支給を表すラテン語のサラリウムだ。

さて塩は、天然には岩塩のように固形のものと、海水など水溶性のものとがある。日本では、岩塩がない上、四面を海に囲まれているため、海水から塩を採取した。特に発達したのは比較的降雨量の少ない瀬戸内海沿岸地方で、塩田に海水を取り入れて、日光と風で濃い塩水(鹹水―かんすい)をとり、それを煮詰めて結晶化させた。現在では、海水を電解透析するイオン交換膜法が一般的である。

日本の塩産業は、明治38年(1905年)に創設された専売制度の下で運営されている。戦後、日本専売公社が管理し、現在は民営化された「日本たばこ産業(株)、塩専売事業本部」が引き継いでいる。

食塩と生理

我々の体液も食塩水(生理的食塩水)である。この体液の恒常性維持に塩は絶対必要物質だが、過剰摂取は健康上大問題となる。特に内臓(五臓六腑)に与える影響が大きいので、一日の摂取量は10g(小さじ2杯)以下が望ましいといわれている。

塩の効用と使用例

(1)調味料として塩味をつける。また酢味や砂糖味を引き立たせる。 (2)腐敗防止…塩辛・塩鮭・塩鰤・塩昆布・いくらなどの塩蔵品。 (3)蛋白質の凝固促進…豆腐”にがり”による製造、塩水による魚の水洗い、魚醤、ゆで卵。 (4)グルテンの粘性と弾性の高化…麺類・パン類の製法。 (5)クロロフィルの緑安定化…青菜に塩。 (6)浸透圧による脱水効果…塩締め、魚の下処理、塩漬けなどの漬物。 (7)酵素作用を抑制し、褐変防止…果物・野菜のアク抜き、サトイモのぬめり取り。

このような働きがあるため、塩は昔から尊ばれ、神様へのお供え物には必ず塩が含まれているし、葬式の野辺送りから帰ると、家に入る前に塩で清める慣わしもある。

料理店の店先に置かれる盛り塩は、中国の故事に由来する。皇帝は毎夜牛車で側室の邸宅を訪れていたが、その中の一人が数多い側室の中から自宅に皇帝を招き入れるため、牛の好む塩を門前に盛って置いた。案の定、牛車の牛はその塩を舐めはじめ一歩も動かず、故に皇帝はこの屋敷を訪れ、それが毎夜繰り返された。この故事から客の足を止め、店に入るようにと縁起を担いで塩が置かれるようになったのだ。