「鰹」 - 食べ物・料理・味の旅 - Dengon Net

「鰹」

2006-04-03

先月号でカツオ節とそのダシについて述べたが、今回はカツオ節の元であるカツオ(鰹)そのものについて書いてみる。

数日前、行きつけの鮮魚店(中国人経営)の店頭で素晴らしくピチピチの本鰹を見た。目がピカピカと光り、皮肌に艶があり、身がはちきれんばかりにパンパンに張った魚体をしていた。値段は通常の鰹の倍程もしている。うーんと唸って考えた。1

本大体2.5kgぐらいの大きさだから、30ドル近くの出費だ。これはとても採算性がない。しかし、一度傾きかけた気持ちを戻すのはちょっと無理。えーぃままよ、従業員で食っちゃえと、その日のスタッフミールは豪華”土佐丼”、その大半を営業前に食べてしまった。お客様用にはほとんど残さず、骨で作った赤出し汁もスタッフで楽しんでしまった。

私もこの地に20年以上生活しているが、こんなに新鮮な本鰹との出会いは初めてのことで、本当に満喫できた。読者の皆様には、その味も香りもお届けできず、申し訳ない。

ところで鰹というと、皆さんの中には魚屋の店頭で “Bonito”として並べられている魚を本鰹と思い、買い求め、食べてみてその味が予想と違うのに腹を立てたことがある人も多いのではないか。

そもそも鰹には、本鰹の他にソーダ鰹やハ鰹(歯鰹、関東ではホーサンとも呼ぶ)の種類がある。共に鮮度が良ければ、生食できるが、その味は本鰹には遠く及ばない。

ソーダ鰹はソーダ節として安価のカツオ節となり、蕎麦ダシなどに用いられる。歯鰹は主に、シーチキンやフレークの材料になる。”Bonito”とは、この歯鰹の当地名である。それ故、これを本鰹と錯覚する日本人が多く、度々苦情を聞く。

歯鰹は本鰹ほど背の色が濃くない点、魚体についている縦線(縦縞)が細く数も多い点、その名の如く口中の歯が鋭い点などの特徴があるが、見極めるのは結構難しい。

それでは本鰹は、当地では何と呼ばれているのか? これも答えるのに大変に困難である、一般的には”Strive Tuna”だが、魚屋によっては、”Bonito”といっているところもある。私の買った店では、何とTunaと名札がついていた。

その他にも、”Skipjack、Skipjack Tuna、Oceanic Bonito”などの名もある。紛らわしい話だが、マナガツオ、シマガツオなどは正式には鰹の仲間ではない。また前述の縦線とは、魚体の頭を上にした時の体表の縞模様のことをいう。

ちなみに横線(横縞)の代表は石鯛。この鰹の縦線は、生きている内は見えず、死の直後から体表に現れ、鮮度の良い時にはかなり濃く出ているが劣化と共に薄くなっていく。そして鰹の体表色であるが、背側は青紫色で腹側は銀白色である。

鰹は本来、海面すれすれの所を群れをなして泳いでいる。背の青さは、上からの敵の目から海面の色と見間違えさせるため、腹の白さは、下からの敵が海面と見分けられないため、といわれるいわゆる保護色だ。何とも自然界は、上手くできているものである。

最後に、鰹の旬というと、山口素堂の「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」を想い起こし、初夏の青葉の頃と思われがち。

その上、江戸っ子が女房を質に入れてまでも欲したといわれることからも、初鰹が最高と思われるが、これはハシリといい、一度北上した鰹が秋の気配で南へ帰る頃には、その魚体も大きく成長して、脂肪ものってくる。

この戻り鰹の重厚な味が珍重される。オーストラリアでは、これからがまさにその旬となる。ぜひ一度お試しを。