今月紹介する俗語は、第2回の“Bugger”と共に、オージスラングの中で最もオーストラリアらしい単語です。1894年8月18日号でオーストラリアの有名なニュース誌“The Bulletin”がこの俗語を「オーストラリアの形容詞」と述べて以来、テレビCM、政治家の発言、新聞記事などに何回も登場しています。
その言葉は“Bloody”です。17世紀イギリス生まれの言葉ですが、母国では1750年代から1970年代、大変下品な言葉だと思われていました。40年代では、家の外で使うと、警官に捕まえられて罰金をとられてしまうほど悪く思われていました。
しかし、同年代にオーストラリアのある離婚裁判で裁判長が「Bloodyはあまりにも多く使われており、無礼な言葉だと思われていない」と発言し、イギリスとオーストラリアの考え方の違いを明らかに示しました。
形容詞や名詞を強調するために使用されている“Bloody”ですが、本来“Bloody”は、「血まみれの」という意味で使用されていました。けれど、現在のような使われ方のはじまりは残念ながら不明です。語学者の推測によると、「血というもの自体が痛々しいから、現在の使い方になった」という説明が最も事実に近いと思われています。
「なぜイギリスでは失礼な言葉だったのにオーストラリアでは普通に使われていたのか」というと、イギリスの階級社会とオーストラリアの歴史に理由があります。昔、イギリスでは“Bloody”は低階級の人達の言葉とされ、中・高階級の人達はまったく使わず、その代わりに“Blasted”などを使いました。
最初に来豪した人は、ほとんど低階級の人達や囚人だったため、「階級のない社会を作ろう」という気持ちから、“Bloody”の使用が許されたのです。
そして、現在もオーストラリアでは、“Bloody”が通用しています。きっと最も有名な使われ方は1989年に始まった、TAC(交通事故委員会)の“Drink, Drive, Bloody Idiot”の反飲酒運転キャンペーン・スローガンで、テレビCMや看板などに大々的に使われました。時々道路の横に見かけるこのスローガンは、ビクトリア州の州民たちの意識に焼き付いたと思います。
下記のように名詞の前に置いて使い、その名詞を強調します。“That’s a bloody lie!”というと「なんといううそだ!」というように強い表現になります。そして、伝説的な表現の“Bloody beauty!”、あるいは“Bloody legend”にも使われ、「最高!」という場合に使います。
気がきいた友達が、タイミングよくビールを持ってきくれたらこういうふうに“Mate, you bloody legend!!”、と言ってみては。ちなみに、女性は普段“Bloody”を使いませんが、怒っているときは、ほかの名詞の前につけて言っています。
同じ意味で言葉の真ん中に入れることもできます。“Absolutely”は“Abso- bloody - lutely”、“Too right!”(そのとおり)は“Too bloody right”と言い換えられます。
同意するときの俗語は“Bloody oath!”です。もともと“My blood oath”(血の約束)という意味で“You can have my blood oath”から来ました。3ヶ月前くらい、あるチキンの冷凍食品のCMにこの俗語が出ました。
もちろん、“Bloody hell!”という表現もあり、「くそー!」か「ゥア!」(びっくりするとき)に使えます。
今月号で「オージースラング教室」の最終回となります。1年間読んでいただき、読者のみなさんに心から感謝しています。少しでも役に立てたなら幸いです。では!
