
Copy right Jacques Denarnaud
毎年恒例の「メルボルン国際芸術祭」に、世界40ヶ国以上で公演を行い、イギリスで最も権威のあるローレンス・オリビエ賞作品賞を受賞した経験のある、舞踏パフォーマーグループ「山海塾」がやってきます。公演を前に、主宰の天児さんに、舞踏に対する思いをうかがいました。
山海塾とは
「山海塾」は、その名のとおり、日本の自然を象徴したプライベートスクールのような少人数の舞踏カンパニーです。1975年に設立し、1980年から海外公演を開始しました。1982年からは、パリ市立劇場を創作活動の拠点として、2年に1度のペースで作品を発表し続けています。
私は演出、振付、空間、衣裳デザインも含め、すべてを創作しています。2年の間、気になったことや、やり残していることなどをメモしてためておき、それを抽出または自然発酵させるような形で、次回の作品を作っていくスタイルをとっています。テーマを決めてビルトアップするのではなく、ドロップさせていきます。
Copy right Yuji Arisugawa
メンバーは1年のうち半年間をマックスに、ツアー活動をします。残りの半年は各自の活動期間として開放しています。作品を作るときは、2ヶ月ぐらい集中して稽古しますが、基礎的な訓練方法はすでに伝えてあるので、個々人で行います。
言葉を使わない舞台
創作していく過程では、当然、ダンサーとの間に言葉は介在しますが、本番の舞台上では言葉は使いません。舞台美術、音楽、照明、振付を舞台上で総合的に変化させ、表現を成立させています。
そういう点で、身体をともなう舞踊は、言葉が介在しない分、異なる国や、別の文化圏でも直接的にインプレッションを与えることができると思います。
観客の生活ベースやバックグラウンドがそれぞれ異なるので、見る人によって印象も異なります。言葉がないからと、むずかしく考えず、観て感じたことを大切にしてもらえればうれしいです。それが観客との関係性を作っていくと思っています。つまり「観られることで作品が生かされている」ということでしょう。
象徴的な作品のタイトル
作品のタイトルは古語に近いものと短い文章を組み合わせています。たとえば『しじま』は、静けさを表す言葉ですが、「静けさ」と書くと、表象的で、付随するニュアンスが抜け落ちてしまいます。今回の『かがみの隠喩の彼方へ―かげみ』は、「影を見る」から来ていて「かがみ(鏡)」の語源といわれている「かげみ」と、それを補助し、舞台の内容を象徴するサブタイトルをつけています。海外で公演するときも意図的にローマ字表記をして、短い説明をつけています。
タイトルも含め、コラージュされた7つの場面から成る作品全体を楽しんでもらえればうれしいです。
Copy right Jacques Denarnaud
重力との対話
西洋の舞踊が、重力への反発・解放とすれば、私たちの舞踏は、重力との同調を意識しています。それは時間や空間において体と重力の緊張関係を大切にする、まさに「重力との対話」といえます。
人間は、夜寝るときに重力に体を預けて水平に横たわります。朝起きるときは重力に逆らって垂直に立ち上がります。このとき誰もがこの過程の重力を意識していません。また、赤ちゃんは生まれてから立ち上がるまで、ほぼ1年かかりますが、いわばその1年間は重力と対話しているといえます。
私はそういった、誰もが共通して持つ過程も含めて、舞踊を考えたいと思っています。また、悲しい、うれしいという人間の基本的な感情も人間として普遍的なものです。同様に、文化の違いも大切に考えています。やはり、西洋の舞踊とは違う、物珍しい、奇異なものというだけでは、長年続けていけません。「差異と普遍性」の重要性を大切に、舞踏に取り組んできたので、現在でも、世界中からオファーをいただくのだと思っています。
来年は、個人としては、3月にリヨンで新作オペラの演出をします。5月には、山海塾の新作公演をパリ市立劇場で行います。楽しみにしていてください。
