プロフィール: 1969年 福岡県生まれ 1998年 メルボルンのRMIT大学付属TAFEの通訳コースに入学。某翻訳事務所の仕事を手伝いながら、平行して学業も精力的にこなす多忙な日々を送る。 2000年 NAATIプロフェッショナルレベルの通訳翻訳資格を取得。 2001年から母校であるRMIT通訳コースで教鞭をとりながら、主にビジネス系通訳のフリーランスとしても活躍中。
通訳に近道はない。自分から求めていく姿勢があれば、きっとチャンスはある。
-通訳になるきっかけは?
RMIT大学付属TAFEの通訳コースに入学したのは、実は英語力を高めたかったからで、通訳になりたかった訳ではなかったのです。日本にいた時に将来、国際貢献や留学カウンセラーといった世界と関わる仕事を通じて、いろいろな人やいろいろな考え方の仲立ちができたらいいなと思っていました。そのためには英語が必要で、だから通訳コースに進みました。ところが、授業が進むなかで先生から「通訳は一生勉強、刺激のある仕事」と聞いてピーンときました。一生勉強、刺激。好奇心をかきたてたこの言葉の引力が、私の考えを180度変えてしまい、通訳の世界に引き込んでくれました。
-通訳になるまでの経緯は?
RMIT通訳コースの半年間でディプロマを取得して卒業後、約1年間は学校の先生の紹介で通訳の仕事をしたり、某通訳翻訳事務所で仕事をしました。でも、もっと上の通訳レベルを目指したいと思い、1年間のアドバンスディプロマ・コースに通うことに。事務所で仕事を続けながらの通学でしたから、例えば授業が午後早く終われば事務所に直行して仕事をこなすという毎日を過ごしました。アドバンス卒業後はフリーランスの通訳として働き始め、さまざまな会社等から仕事をもらいながら今に至っています。
-特に通訳として大切なことは何?
きちんとした日本語と英語が話せる会話力、仕事に必要な情報をしっかりリサーチできる好奇心、そして自分の解釈や意見から距離をおける客観性。この3つの内のどれが欠けてもいけないでしょう。特に日本人がお客様の場合、お客様は通訳の日本語を評価しますから、ヘタな日本語を使っていたのでは通訳した英語の内容にまで不信感をもたれてしまいます。好奇心が大切なのは、仕事のたびに情報を集める作業があり、好奇心がなくては続かないということ。客観性は、通訳はあくまで黒子として両者の間に入っているだけだという意識を常に持つこと。「通訳は自分の意見が言えないから、私には向いていない」と言って、通訳を諦める人もいるくらいです。
-通訳の需要って?
私はフリーランスでビジネス系の通訳をしていますが、時期によって仕事量に大きな差が出るのが少々困ります。年度替わりの時期、多くの場合3月から5月頃までは日本からの視察や旅行、商談などの数が減ってしまいます。スタッフが一新した頃に視察や商談をしても、成果が期待できないのは容易に想像できますから。こればかりは、私が一生懸命がんばってもどうにもなりません。
-印象に残っている仕事は何ですか?
ある高齢者の医療施設に日本の研修生が訪問する際、通訳として同行したことがありました。現地スタッフのさまざまな解説と懸命さをそのまま研修生に通訳したとき、その研修生の皆さんがこれを聞いて感銘を受けられているのをみて、私は「この場に立ち会えてよかった」と心から思いました。 世界中のいろいろな人が私たちを支えていて、その発展のお手伝いができる。通訳はとてもやりがいのある仕事だと自負しています。他にも、普通の人には決して会えない人に会えたり、一般の人が見られない場所、例えば工場の裏側の最新設備を見られるのも、通訳ならではの楽しみですね。
-これから通訳を目指す人にアドバイスを
まず、基本的な英語力を身につけることが第一です。TAFEや大学で勉強してからでないと難しいと思います。次に、怠けたい人はダメ。学校では「もっと課題をください」くらいのハングリー精神がないと、実際に卒業して仕事をするときに満足な情報も集められず、お客様の通訳に対する要求に応えられません。 目標を持つことも大切です。日本で働くかオーストラリアで働くか。どの分野の通訳をしたいか。本当に自分は通訳がしたいのか。社会人の経験がないなら、こちらで働いて背景知識を学ぶことを勧めます。通訳に近道はありません。私の教え子にも現在通訳として活躍している人がいますが、皆やる気を持って自分から動いて今のポジションをつかんでいます。必ずチャンスはあります。ぜひ夢をかなえてください。

