労働党の党首交代劇
連邦議会は総選挙を来年に控えており、政界ではすでに選挙を前提にした政策が発表されたり、水面下での駆け引きが行われている。長期安定政権となっているハワード政府内でも、コステロ蔵相が世代交代を訴えて空振りに終わった騒動が記憶に新しい。
野党の労働党でも、以前に2回総選挙で敗退しているキム・ビーズリー党首では勝てないという意見が囁かれていたが、総選挙までの時間が迫るにつれ、これ以上のお家騒動は労働党のイメージにマイナスだという穏健派の意見が大勢を占めた感があった。
またビーズリー党首も太目の体を絞り込んで気合を入れている様子が見られた。次代候補の筆頭のケビン・ラッド議員も、女性のジュリア・ギリヤード議員も、野心は持ちつつ、直接のチャレンジは避け、機会を窺がっていた。その慎重な態度から、次の総選挙はビーズリー党首で「負けて」おいて、その次を目指すのではないかと見られていた。
ところが12月に入って、突如、この二人の次世代候補が共同でビーズリー党首に挑戦を申し込んだ。彼らは「次回の総選挙は労働党の将来に大きな意味を持つもので、ぜひ勝たなければならない」という前提で、ラッド議員を党首、ギリヤード議員を副党首とする首脳陣で来年の総選挙に臨むという提案を行った。ビーズリー党首はこの提案を受け入れ、労働党議員による党首選投票を行うことに合意した。
12月4日、注目の投票が行われ、ラッド新党首、ギリヤード新副党首の新体制が誕生した。この投票結果の発表記者会見の直前、ビーズリー議員の弟の急死のニュースが伝えられ、ビーズリー議員にとってはダブルパンチとなった。彼は家族の大切さを訴えた後、地元の西オーストラリアへ帰り、後日の記者会見で次回の選挙には出馬せず、政界から引退することを発表した。
12月10日、ラッド新党首は、労働党の首脳陣営の入れ替えを発表した(この陣営は労働党が政権を取った場合、そのまま内閣の閣僚となることが前提で、「影の内閣」と呼ばれる)。注目のギリヤード副党首は労働相に任命された。労働党にとって、次回の総選挙の争点がハワード首相の労働法への反対にあることを強調した形となる。

またロックグループ、ミッドナイトオイルの元リーダーで、環境運動家としても知られ、前回の総選挙で労働党からの当選を果たした、ピーター・ギャレット議員が環境相として首脳陣営に加わった。
ラッド新党首は彼の任命に関して、地球温暖化は避けられない問題で、ハワード政権が前向きの対応をしていないこと、労働党は違いを見せる意欲があることを強調した。
またウラン採掘に関するギャレット議員との意見の相違を指摘され、民主政治とは違った意見を持ち寄って、党の方針を決めるものだとして肯定的な発言をするなど、メディアの受けも上々といえる。また医療、教育など長期的な展望を必要とする政策で、連邦政府と州政府の責任分担をきちんとしながら、積極的に取り組んでいく方針も見せている。
対するハワード首相は、インタビューに答え、顔ぶれは新しいが、労働法などの古い話題をいまだに議論していて、政策内容に新しさがないと指摘した。しかし、新首脳陣選出後の世論調査では、ラッド党首への支持率がハワード首相に迫る勢いを見せており、来年の総選挙に政権交代の可能性というおもしろみが出たことに間違いはない。
