
幼稚園児のとき、先生が嫌いでやめてしまったピアノ教室。でも、未だに何か音楽ができたらいいな、という漠然とした憧れがある。だが、右手と左手が違うリズムをとるのが苦手なのは、和太鼓教室のときに実証済み。そんな私が今回はピアノ教室に挑戦だ。
個人の力に合わせて指導してくれる
駅から徒歩5分。アパートメントの1室、先生の自宅が教室だ。ベルリン製95年前のピアノと笑顔の松山先生が待っていた。
まずは見学。今日の生徒は、毎日コンピューターを使う仕事をしている渡部さん。小学校にあがる前に6ヶ月ぐらいやっていたが、先生が嫌いでやめたという。私と同じだ。
そのまま、ピアノは習わずにきたが、ここにきて昨年10月から土日に時間ができ、趣味として弾けるようになればいいなと思い再開したそうだ。松山先生のプライベートレッスンが効を奏し、最近では、簡単なメロディと伴奏はこなせるようになってきたそうだ。ジャズが弾けるようになるのが目標と聞いた。
「私にとってピアノを習うことはリラクゼーションになるんです。でも、まったくの初心者と同じレベルなので、グループレッスンでは無理と思った」という渡部さん。

そんな生徒に、個別にポイントを抑えた指導をしているのが松山先生だ。レッスン風景を見ると、関西弁を交えながら優しく、しかも的確に言葉をかけている。「肩の力を抜いて」「次はゆっくり弾いてみましょう」「右手だけでやってみましょう」と、ちょっとつまずいても先へ進められるようにアドバイスをくれる。
できるようになると、楽譜に○をつけてくれるのがうれしい。ポイントになるところに印しも書き入れてくれ、家で練習するのにも覚えておける。先生が一緒に数オクターブ低いところで弾いてくれるので、間違えてもすぐに直せる。
コツコツ練習することが大事
さて、いよいよ私の番。指の置き方は覚えていたので鍵盤に指を乗せ、初心者向けの指の動きを覚えるための曲を弾いてみる。「♪ドミドミ」とやっているうちに調子が出てきた。では、と次に第九「歓びの歌」の一節をまず右手で。次に左手も合わせて…。左手が数回引っかかったものの、もう少し練習すれば何とかミスなくできそうだ。手が比較的大きいから、鍵盤には向いていいるのかもしれない。
先生が「音がしっかり出ていてきれいですね」とほめてくれる。その気にさせるのが上手なようだ。あっという間に時間が過ぎてしまった。
姿勢を正し、鍵盤に向かって音を紡いでいくのは気持ちがいい。ほかの楽器も同じだと思うが、練習したらその分だけ音が澄んでいく気がする。ここでは、30分だけのレッスンだが、家での練習の仕方も教えてくれるので、あとは毎日少しずつ練習すればいい。
音楽の楽しさを学んでほしい
松山先生は教師歴が長く、それぞれの生徒に合わせて教えてくれる。特に子どもの場合は、指の基礎訓練、演奏力など、幅広くきっちり力をつけられるように心がけているそうだ。帰国する人には日本語、永住者には英語で、と読譜ももちろん教えてくれる。
子どもの頃、練習や先生が嫌いでやめてしまった人が多いのですが、大人になって、またやってみたいと思ったときがチャンスです。がんばればできます。ピアノを弾いたことのない人もトライしてみてください、とのメッセージ。
「大人の生徒さんは、頭ではわかっているのに、手が動かない」という方が多いので、ゆっくり根気よく練習するようにお付き合いしていますよ」という先生の笑顔にホッとさせられた。趣味で始めたい初心者から、基礎もきっちり習いたい方まで、“一人一人の状況や能力、要望に合ったレッスン”をモットーにしているというのもうなずけた。
松山知恵先生
奈良県出身。3歳からヤマハ音楽教室でピアノを習う。
大阪教育大学ピアノ科卒業。大阪でヤマハ音楽教室講師を4年間。
大学生の間に数回海外に行き、いつかは海外で暮らしたいと思い、メルボルンに語学留学。
ヤマハ音楽教室をやめたあと、モナッシュ大学の音楽教育養成科に1年通い卒業。
ピアノ個人レッスンを始める。