
“いけばな”というと、あまりに古式ゆかしいイメージで、まるで縁のない代物と思っていたが、今回訪れた“池坊 ミニチュア自由花”は、正真正銘のいけばなでありながら、そのイメージを一新。カジュアルな雰囲気の中でのカジュアルないけばなは、花への親近感をぐっと増してくれた。

お花を通して和を大切に
Yukako先生のいけばな教室は、メルボルン有数の高級住宅地Toorakの真ん中にある。玄関で出迎えてくれたのは、奥ゆかしいながらも上品で親しみのある、いけばなとYukako先生の笑顔。しかも室内の方からはにぎやかな笑い声も漏れ聞こえ、一気にこちらの緊張感も和らいだ。というのも、Yukako先生は、“いけばなの歴史そのもの”ともいえる池坊の最高職・総華督、メルボルン支部長という肩書きゆえ、どんな気難しい人なのかと不安だったからだ。
「お花を通して和を大切にするため」に、レッスンの前にはいつもお茶をいただきながら、しばしみんなでおしゃべりを楽しむ。続いて2分間の瞑想。日本古来の華道、茶道、武道と“道”のつくものには、心のトレーニングも含まれているからだそうだ。
美しさとかわいらしさを尊重して
1回のレッスンは約2時間で、2~3作品を作る。日本のいけばなでは普通、見本は作らないそうだが、ここでは先生の作った作品を参考にしながら作業を進めていく。

今日はまず、チューリップをメインにした作品作りということで、用意されたチューリップを各自2本ずつ選び、オアシスに差していく。大切なのは「花の美しさ、かわいらしさを見出しながらいけていくこと」。自分の作りたい形を、決して花に押し付けるのではなく、花の持つ自然の美しさを尊重していくのだという。
ミニチュアというだけあり、サイズはA4判用紙半分の大きさ。コーヒーカップやミニプレートなどの身近な花器に、チューリップやキクなど裏庭に咲いているような身近な花材をいけていく。小さな空間に飾ることを意識してはいるものの、いけばな本来の「間の美しさ」は受け継いでいるので、一見今風でありながらも、日本人独特のわびさび感というか奥ゆかしさはしっかりと伝わってくる。
いけばなは最も古い様式である室町時代の立花、その後江戸時代、庶民にも広がった生花、近代には自由な発想の自由花とその時代と生活様式に合った形で創造されていった。そんな中でミニチュア自由花は、年々狭小化する生活空間でも飾れるものとして、1997年に日本の池坊で始まり、メルボルンではこれまでのいけばな教室に加えて、今年2月からスタートしたのだそうだ。
「いけばなは空間を作り、フラワーアレンジメントは空間を埋めていくという違いがあるんです」とYukako先生。一輪の花の向きを変えながら「これはいけばな、こうするとフラワーアレンジメントになってしまうんですよ」と教えてくれるが、素人にはなかなか見分けがつかない。先生はときには花に話しかけさえしながら、主役のチューリップをシダ、ゼラニウム、キク、スイートウィリアムで見事に飾っていく。
カジュアルながらも奥が深い

2つ目はアリストロメリアとキクをミニカップにいけ、最後は先生がひとりずつの作品を見ながら、丁寧に直してくれる。(葉や茎を)切るだけ、(花を)挿すだけなのに、しかも先生のお手本があるのに、みんなのできあがりがそれぞれ違うのは、本当に不思議だ。
「これまでの経験がなくても、気軽な趣味として始められますよね」と口を揃える生徒さん。2月から始めたばかりの今日の生徒さん5人は全員、入門・初伝というお免状の交付を待っているのだそうだ。
「奥が深いながらもカジュアルで、カジュアルながらも奥が深い」。日本文化の真髄への入門編として、ぜひお勧めしたい習い事だ。
Yukako Braun先生

