

年齢を重ねるごとに花を贈ったり贈られたりする機会が増えてくる気がする。そして花束をもらうたびに、大きな花瓶にざっくりと入れるしか術を知らない自分の不甲斐無さ。その時々の気持ちをフラワーアレンジメントという方法で表現し、押し花(プレストフラワー)という方法で保存できたなら…の思いを胸に、教室を訪れてみた。
それぞれの個性を尊重しながら
並木道が美しいKewの閑静な住宅街。10時スタートのレッスンに集まった生徒さん達は、まるで友達の家にでも招かれたような気軽さで、教室として開放されている瀟洒な自宅ダイニングに入ってくると、持参した花器を手にキッチンへ行き、慣れた手つきで用意されたオアシスを花器にセットする。
この日はラウンド(半球形に構成されたアレンジメントで、360度どこからでも鑑賞できる)のフリースタイル。新聞紙にくるまれた、千日紅、麦、ベリー、ドラセナなどの花材が各自に配られるが、これはMegumi先生が花市場で買ったそれぞれの束のものをばらして組み直したもの。
「今日のメインはダリアですよ」。Megumi 先生の良く通る澄んだ声と共に、大輪の3つのトーンのダリアを運んできた。
新年最初のレッスンで1ヶ月近く休みに入っていたとはいえ、3人の生徒さん達は各自で5本ずつのダリアを選ぶと、さっそく作業に取り掛かる。
今回の取材では、しっかりとフラワーアレンジメント初体験をしようと意気込んではいたものの、しかも先生からは皆に今日のレジュメまで配られているものの、何をしていいのか見当もつかない。もちろん先生は隣で、こちらの様子を見ながら、図解までしながら「ダリアは丸い花なので、その丸を活かして全体がドーム型になるようにグリーンを入れていくんですよ」。…そ、そんなこと言われても…!
取り敢えず、言われたようにダリアを配置してはみたものの、そこから先が進まない。「アウトラインだけお手伝いしましょうか?」。素直にお任せしたおかげで、その後グリーンを入れていく作業の真似事に没頭できた。
1時間ほどして、皆の作品が8割方まとまってきた頃、先生が一人ずつの作品にアドバイスをして回る。それが実に丁寧で、しかも理路整然としている。生徒さんそれぞれの個性を尊重しながら、アレンジメントの方法を指導しているという姿勢が、実に好感を持てる。
主婦に最適な押し花
レッスンは1回2時間で、ラウンド、クレッセント、花束等、その日のテーマに合った花器を各自で用意し、花材は先生が用意してくれる。これは、オーストラリアでは花を1本単位で購入することができないとの事情もあるからだ。
「オーストラリアは、花や色の種類が日本に比べて少なく、原色がほとんどでアレンジメントも大胆。日本では、やわらかな色合いや小花などの繊細な組み合わせが多いですね」と、日豪のフラワーアレンジメントの違いを的確に話してくれるのも、日本の生花店で長年働いた経験があるからこそ。「さっと楽しめる手軽さ、季節ごとに楽しめる花の種類の多さ、そしてかわいいところですね」と、アレンジメントの魅力を語るMegumi先生。
押し花に出合ったのも、生花店に勤めていた頃で、その後技術を学ぶべく、押し花制作専門の会社に転職したのだそうだ。
「押し花は、ブーケから押し花へと一連の仕事として自分でできるおもしろさがありました。しかも、生花ではないので、好きな時間に好きなだけ作業ができ、自宅でもできるという点で、将来的にもずっと続けていける仕事だと思ったんです」。
結婚式のブーケなど、思い出の花束をその香りごと、半永久的に保存できるという利点はあるものの、その制作過程は、花の解体から乾燥、色付けと、作業の細かさと時間の長さは相当なもの。そんな理由からか、オーストラリアでは、ほとんど知られていないのが現状だと言う。
「平面でのデザインのおもしろさもありますが、ちょっとした家事の合間に作業できるので、主婦の方には最適。それにメルボルンの気候は花を乾燥させやすいんですよ」と、Megumi先生。
レッスン後、完成品を前に皆でお茶をいただきながら1時間。生徒さんの一人の「花屋さんの前を通るのが楽しくなる」という言葉の意味が実感できる習い事だ。

