
「はじめてなんですが、どんなことをするんですか?」と電話で聞くと、「糊とアクリル絵の具を混ぜて手で描きます。そうすると、リラックスしていろんな色が出るんです。誰かの真似ではなく、その人の色で、その人自身の絵を描いてほしいから」という答えが返ってきた。これはおもしろそうだ。行ってみるしかない。
うまく描かなくていい
アーティストパークのドアを開けると、人懐っこい犬が出迎えてくれた。リラックスするように、静かな音楽も流れている。今日は子供達のクラスで、「先生、こんにちは」とみんな元気に入ってくる。
自分の席を決めて、早くも描きたそうにしている子供達に先生が、「今まで色を混ぜたことがあるよね。どんどん色を混ぜていくと、どうなるか覚えてる? そう、にごった茶色や黒っぽい色になるよね。それで、今日は色がにごらないように、色を点で描く方法を教えます」と、その方法をやってみせる。これはSeuralという画家の手法だそうだ。
「じゃぁ、みんな、描く前に目を閉じて、どんなイメージで描くか決めましょう」と、まずは気持ちを落ち着かせる。先生は、それぞれが思い思いに描くのをやさしく見守りながら、楽しくできるように手を添えたり、アドバイスをしたりしていく。
10歳以上の人には「これを見てかいてください」と、Seuralの絵の写真が渡された。子供達を横目に、「うーん、いきなりこんな難しいのは描けないぞ」と絵をにらんでいたら、「うまく描こうとしなくていいんです。点描画の手法がどんなものか体験してみることが大事」と言われ、結構好きなように、薄い色の部分から手をつけてみた。
これまで当然のように、パレットで色を混ぜてから描いていたので、思い通りの色にならず、フラストレーションが貯まるかと思いきや、画用紙がパレットのようになり、ブラシでトントンと色を重ねていくのが、案外おもしろいことを発見。取材なのに写真を撮るのを忘れそうになった。
それぞれにあったカリキュラムで
「絵を描くことで、子供は集中力を養います。また『自分のやり方でいいんだ。やった、できたぞ』という自信がつきます。今回は、色を混ぜてから描く手法をとらなかったので、あなたが感じたように子供達にもフラストレーションがあったようです。
でも、思い通りにならないことがあるということを覚えるのも必要なことです」と先生。「大人の場合は、固定観念を取り払い、自由に色を使えるように、指で混ぜて描くことから始めます。そして、色作りに興味があるのか、形を作るのが好きか等を見たうえで、それぞれの人に合わせてカリキュラムを組みます」。
カリキュラムは、絵画、彫刻、デザインの広範囲にまたがり、音楽や物語の感想を表現したり、粘土遊び、クロッキー、染色、鍛金等、バラエティに富んだ内容になっているそうだ。
感じたことを形にする
早くも描き終えた子には、「きれいな色だね」「これは、何をイメージしたの?」と声をかけていく。「夕焼け」「ジャングル」と返事がある。描き終わった子は、パレットや筆を洗った後、折り紙で遊び始めたが、とがめられることもない。その間に先生は、子供達の描いた絵の裏に名前とタイトルを書き、連絡帳も書いている。
子供を通わせているお母さんが、「連絡帳に、その日どんなことをしたかだけではなく、親の視点とは全く違う目で見てくれて、気が付いたことを書いてくれるので、楽しみにしています」と言っていたことがうなずける。
「アートは自己表現なんです。自分が感じたことを表現するのは、必要なことです。画家にならなくてもいい。色と形で遊び、自分の心に顧みることが大事ですね」と先生。才能も個性も様々なので、それぞれのやり方でやらせくれ、それをちょっと離れて見守ってくれている安心感があるクラスだった。

