私のクラスにAくんという男の子がいました。Aくんはとても元気がよく、力の強い子でした。ある日、AくんとBくんが追いかけっこをして遊んでいたとき、Bくんが転んでひざをけがし、すりむいた膝から血が出てしまいました。幼稚園から事情を説明し、お詫びの電話をBくんのお母さんにしたところ、「Aくんは乱暴なようですね。あまりうちの子とは遊ばせないようにしてください」とおっしゃいました。その後、Bくん自身からも「Aくんは悪い子!」という言葉を聞くようになりました。
確かにAくんは元気がいいので、ついお友だちとぶつかったり、何かでけんかになったりすることがありました。その際にAくんのお母さんがそれを見ていてもあまり叱らないということで、他の保護者の方々からも、Aくんとお母さんに対してクレームが増え、Aくんのお母さんは少しずつ、お母さん達の輪に入れなくなったようでした。
自分の子どもが悪いことをしたとき、その場でしっかりと叱る、子どもから相手に対して謝らせる、そして、お母さん自身からも相手の人に謝るという態度は、友達関係を円滑にするために大切なことです。大人がフォローすることで、子どもも学んでいきます。
ある日Bくんが、工作の時間になかなか上手く作れなくて苦労していたところ、Aくんが根気よくBくんに教えてあげている場面がありました。また別の日、おとなしくて恥ずかしがり屋のCちゃんがクラスみんなの前ではなかなか大きな声で発言できないでいるとき、Aくんが「Cちゃんがんばれ!」と励ましていることもありました。
子ども達はそれぞれに発育発達の途中です。個性もあります。完璧な子どもなんていません。それぞれがお互いを助けながら、互いに学びあっているのです。Aくんだけが、特別に「悪い子」と言われてしまったことを残念に思います。
そのことを保護者の方が集まっているときにお話したのですが、ある人から「先生には、いつもいつもやられている子どもを持つ親の気持ちは、わからない」と言われました。確かにそのとおりかもしれません。
ただ、Aくんには悪い面ばかりでなく、いい面もたくさんある、今はまだ成長過程なので温かく見守って欲しいと思ったのです。それはBくんもCちゃんも同じです。皆さんの周りにもAくんのような子どもはいないでしょうか。Aくんのような子どもも大人が見守ってあげることが必要なのではないでしょうか。
