
バラマンディーの塩釜焼き($39)は、塩と卵白で固めてあり、食べるときにわってくれる。ワクワクして待つ楽しみがある。
地元の素材を吟味しながら日本の味を練り続ける名店
メルボルンで定評のある日本食レストランといえば必ず挙がるのがこの店。ビジネス会食でも、日本から来たばかりの人でも、期待を裏切らない味だ。その秘密に迫った。

ワニのしっぽの下側の柔らかいところだけを使ったスープは深いコクがあり、印象的($8)。ゆずの香りがほんのり。

杉板がくすぶった状態で出てくる杉板焼き(オントレーサイズ$15)。

和牛の冷ししゃぶしゃぶ($27)。さっぱりとした和牛の薄切りにゴマベースのたれが効いている。

デザートだけを食べに来る人もいるというのも、とてもよくわかる。

5人のシェフが勢揃い。左から曽我さん、伊藤さん、吉田さん、石塚さん、久保田さん。
10年以上前には今と違って日本食レストランの数も少なかった。その頃から安定した評判を保っているのが今回の店、花菱だ。落ち着いた色調と座り心地のいいダイニングで、ゆったりと日本の味をいただきます!
ヘッドシェフの曽我さんはとても穏やかな話し方をするが、話の内容は熱い。おいしい素材を真剣に探し続けていることがまっすぐに伝わってくる。たとえば塩釜焼きに使うバラマンディーは通常の仕入れ方では10本に2本しか使い物にならず、以前は仕入れるたびに目立たない部分を焼いて味見してから選んでいたそうだ。駄目だった哀れな8本がどうなったかは聞きそびれたが、そうやって素材を吟味し、仕入先を絞っている。牛肉、豚肉、鳥肉も産地を厳選し、仕入先をメニューに載せている。全てのお客様には伝えきれないシェフの気持ちを込めたメッセージだ。
さっそくバラマンディーの塩釜焼きをいただく。花菱のメニュー全般にいえるのは、味だけでなく盛り付けにも趣向が凝らされていること。この料理が出てきただけで嬉しい気持ちになるのは間違いない。オージーのお客様を連れていれば、日本人としてちょっと得意な気分になるかも。しかも食べてみて驚く。高級感のある料理にありがちな「それなりの味」ではない。なんとこのバラマンディー、中の骨をていねいに抜き、細かく刻んだゆずを挟み込み、笹の葉で包んである。その味はまろやかで絶妙。付け合わせの揚げたきくいもと栗の味も季節感満点で飽きることがないし、ほうれん草のごまあえも、ごまの味とだしが繊細で、自宅で作るのとは格段違うおいしさだ。
同時に杉板焼きもいただく。この盛り付けも正統派日本食の美。南氷洋で獲れたむつの味噌付けを焼いて薄い杉板で包み、食べる間際に杉板の端を焦がして香ばしい風味を出している。当たり前のメニューのようで、味わいの深みを存分に感じる。曽我さんの実家が魚屋さんだったと聞いて納得。今回取材に行った魚好きの担当者二人にとっては極楽。これでおいしいお酒があれば、もう何もいらない。味へのこだわりは酒類にも反映していて、日本酒も揃っているし、ワインに至っては常に5~6千本が店内で飲み頃を待っている。二階には和室の個室もあって、4人から利用できる。花道家の活け花が随所に置かれ、日本情緒を味わうには最高の舞台だといえる。
おいしい料理は魚だけではない。和牛や黒豚を使った料理も並ぶ。通常の和牛に加え、特選和牛のステーキもある。こちらは65 ドルとお値段もいいが、柔らかさと焼き加減が見事で、試す価値あり。メニューには寿司、天ぷらなどの定番に加え、多くのスペシャルメニューもあり、オントレーサイズの料理を並べてゆっくりと味わう常連さんも多いと聞く。バッテラ、ほたるいかの塩辛、あぶりサーモン、エビのかき揚げなど見ているだけで食べたくなる料理が並んでいる。メニューには載っていないが、予算を伝えればお任せメニューも用意してくれるそうだ。ランチは、丼物のセットもあるが、花の名前が付けられたお弁当BOXが数種類あり、28ドルから選べる。
スペシャルの中で人気の一品がクロコダイルスープ。素材がいつも入手できるとは限らないので、メニューにあったらラッキーといえる。
ここまでですっかり満足の担当者は、最後に出てきたデザート、花菱デラックス(9品、38ドル)を見て本当にびっくり。中身は季節によって変わるが、今回は抹茶のクルームブリューレ、チョクレートと栗のケーキ、アイスクリーム3種、よもぎ白玉、ラズベリーババロア、タマゴの殻に入ったプリンなど全て店で作っている。それぞれの味もいいが、甘い味とさっぱり味のバランスがよく、あっちこっちと順番に食べる楽しさがたまらない。今夜は本当に満足!
ごちそうさまでした!

