
本気の日本料理を気軽に楽しめる穴場店
2年前にオープンしたGPOの乾山は、ランチ時間には席が取れないほどの人気。しかも最近、別メニューを用意してディナーを始めたと聞いて、この展開は見逃せない、と取材に向かった。
鴨鍋(2人前$50)。この鍋と酒さえあれば一晩中楽しめる!?
海老しゅうまい(3個で$10.50)。エビのおいしさが満載。
とうもろこしとホタテのかき揚げ($13)。意外な組み合わせが絶妙にマッチ。
3種類のサーモン寿司($12)。満足度の高い一皿。
白ごま風味のクリームチーズ($9.50)。
冷製黄桃のスープ($9)。
明るい笑顔で迎えてくれる、スタッフのみなさん。
メルボルンの顔の一つ、GPOが生まれ変わり、その裏手に乾山が支店を出したのが2年前。目立たない場所にあるのに、さすがに食いしん坊の多いメルボルン。
ランチタイムはもちろん、午後のスナック時間にも、お腹を満たしに来る人が絶えない。ラーメン好きの友人によれば、ここの坦々麺がダントツなのだという。定番の寿司や丼物に加え、幕の内弁当などもあり、いつまでもメニューに迷っていても、スタッフの笑顔がやさしい。
そんな店が静かにディナーを始めているというのに、まだほとんど知られていない。これはもったいないではないか。というわけで、今回は新登場のディナーメニューを中心に、いただきます!
ヘッドシェフの宇佐美健太郎さんは、日本で本格的に寿司の板前さんの経験を積んできただけあって、穏やかな笑顔でのさりげない気配りが素晴らしい。その雰囲気がスタッフにも伝わっていて、テイクアウェイ中心の気軽な店というレベルを超えた温かいサービスだ。
健太郎さんの狙いもそこにあった。気軽においしい日本食というと、なかなか難しい。とくに学生や若い女性には本格的な日本食レストランは、ちょっと敷居が高いことも多い。そんな人達に、ここのディナーを気軽に楽しんでもらいたいのだという。
ディナー時間でもラーメンや寿司は健在なので、それだけでも大丈夫。定番メニューのほかに、季節の味を活かしたスペシャルメニューやデザートも用意されている。もちろんビールやワインも揃っている。
最初に出てきたのは海老しゅうまい。中身はプリプリのエビがぎっしりで、細切ワンタンの皮との食感に、出し汁風のソースに付けるという絶妙なバランス。一緒に出てきたのは、季節のスペシャル、とうもろこしとホタテのかき揚げ。とうもろこしと枝豆の甘み、ホタテとエビとのうまみのハーモニーがやさしい味わい。
続いての登場は、3種類のサーモン寿司。一つ目は炙り寿司で、うなぎのタレのようなタレがかかっている。サーモンの下には刻みネギを挟みこんでいて、芸の細かさを見せる。二つ目は、スモークサーモンにクリームとケッパーを乗せている。ここにも秘密があって、サーモンの下には紫オニオンが潜んでいた。
そして三つ目は、炙りサーモンの上にイクラの山盛り。豪華な「親子寿司」だ。酢飯も炙ってあり、その香ばしさと惜しげないイクラに感動。この3種類、シェアする際は事前の話し合いが不可欠、一人ずつ全部食べた方が安全だろう。
ここまでですでにすっかり盛り上がったが、続く鴨鍋の香りに引き寄せられる。たっぷり入った鴨のちょっとクセのある味がうまさになって、スープにコクを加え、えのき、しいたけ、白菜、春菊、糸こんにゃくなどが溶け込んで、新たなおいしさを発見!
しかも前菜の海老しゅうまいまで潜んでいて、もったいないじゃないか! とうれしいオドロキ。スープをたっぷり吸って溶けそうになった大根も、まさに日本の味。うどんも付いていて、さらにご希望の方にはご飯を入れてくれるとのこと。
トドメに出てきたのがデザート2品。実は甘いものが大好きという健太郎さんが日本でわざわざ研究してきたというだけあって、ほかにはない味わい。食事のあとにすっきりと流れるデザートがテーマと聞いたが、どうしてどうして、思わず、「これだけ食べにきてもいいですか」と聞いてしまったほど。
季節によって変わるそうだが、今夜のデザートは冷製黄桃のスープ、黒蜜と生姜の氷菓添え。黒蜜の甘さを生姜で抑えた氷菓と、まったく個性の違うまったりとした黄桃のネクターとの出合いは、和の味わいを漂わせて、お見事。
白ごま風味のクリームチーズ、イチジク赤ワイン煮も、ごまとチーズというこってりしそうな素材をさっぱりとまとめ、さらにワイン味の濃厚なイチジクで締めている。頭の中で、「次の季節の前にもう一度来よう」という思いと、「次はなんだ?」という思いが葛藤していた。
ごちそうさまでした!

